三国志のドラマは魅力的でビジネスでも役に立つ

何がそんなに夢中にさせるのか?
男女差別をするわけではないけれど、「三国志」をおもしろがっている人の多くは男性だ。だいたい歴史ものは、日本の戦国時代ものにしても何にしても、男性が好むものなのだが、なかでも「三国志」は、男性ファンが目立つ。それも、男であれば、世代を問わず、夢中になる。

その理由は、ひとことでいえば、これが「闘いのドラマ」だからだ。他の歴史物語であれば、悲恋があったり、女同士の争いがあったり、あるいは母と子のドラマとか、何らかのかたちで女性を惹きつける要素があるのだが、「三国志」は、全篇にわたって、戦争の話。

その戦争も、ただ刀やヤリで斬ったり突いたりする肉弾戦だけではない。たしかに、とてつもなく強い武将も何人も登場し、その武力の凄まじさが魅力となる場面もある。だが、この時代、すでに中国では、軍団を率いてどう戦うかという、集団戦の時代となっている。

つまり、戦略、戦術、戦闘の3段階があり、なかでも戦略が重要視されるようになっている。そこで、実際に刀を振り回すわけではない、軍師という存在がクローズアップされる。

つまり、「三国志」は軍師による戦略の物語でもある。ただ武力で闘うだけのドラマではなく、知力を尽くして闘うドラマなのだ。そこが、すでに刀で闘う時代でもなければ、個人ではなく組織で仕事をしている現代にも通じるので、おもしろいのだ。

そして、もうひとつの魅力は、「友情の物語」でもあることだ。
主人公である劉備玄徳には、関羽と張飛という、親友にして同志にして部下という2人の義兄弟がいる。「生まれたときは違うけれど、死ぬときは一緒」と宣言した3人の友情の物語が基調としてある。この男と男の友情こそが、本当の人気の秘密かもしれない。

「ビジネスで役に立つ」の噂は本当?
ひところ、出版業界では、ビジネス雑誌は日本の戦国時代と「三国志」を特集すれば売れる、といわれていた。
一般に、大企業であれ中小・零細企業であれ、社長さんたちは、歴史ものが好きだ。

自分自身が一国一城の主だという意識があるし、ライバル企業とのシェア争いに奮闘していたり、あるいは創業者であれば後継者をどうするかに悩んでいたりする。そんなとき、歴史小説を読むと、自分と似た境遇の人物が出てくるので、共鳴するわけだ。

一方、社員にとっても、歴史ものは参考になる。社内の派閥抗争があったりすると、あの専務は家康的だから最後には社長になれるのではないか、あの常務はいずれ社長を裏切りそうだから光秀みたいだとか、歴史上の人物、出来事を参考にして、どの派閥に入ったらいいか考えることもあるだろう。

「三国志」も、そのように社内人事抗争を乗り切るための参考書として読めなくもないが、これはもう少しスケールが大きい。国と国との争いがテーマだから、企業間のシェア争い、新製品開発競争、あるいは、拡販の戦略などを立てる際に、参考になる要素がある。

雑誌などでも、「○○業界三国志」という見出しをよくみかける。業界勢力図を表現するのに、「三国志」は便利なのだ。経営戦略としても、攻めるか引くかなどの駆け引き、軍団をどう組織するか、相手を欺く方法など、ありとあらゆる戦略と戦術が、「三国志」には詰まっている。

このように「ビジネスにも役立つ」と読むこともできるが、これはややこじつけに近いかもしれない。むしろ、商談に行った先の担当者がたまたま「三国志」の大ファンで、諸葛孔明のことで話がはずんで大きな契約がとれた、というようなかたちで「ビジネスに役立つ」可能性のほうが高そうだ。

一昔前までは、取引先との接待で話に詰まったら野球の話をすればいいといわれていたけれど、プロ野球も低迷しているようだし、これからは、「三国志」の話が、接待には欠かせないかもしれない。

実際、「三国志」は、小説、コミック、ゲームにDVDと、合計すれば、とんでもない数が売れている大ベストセラーだ。取引先に「三国志」ファンがいる確率は、巨人ファンがいる確率よりも、高いだろう。

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